Chapter1『ディムガに住む少年』「バリック、ここに隠れてなさい。後で必ず迎いに来るからそれまで出てきちゃダメよ。」一本の長剣を持った女性が幼い自分の子に言い聞かせ部屋から出て扉を閉めた。 閉めた瞬間、剣と剣が交じり合う音が聞こえてきた。 数分後音が聞こえなくなり、扉が開いた。 「母上?」 幼い子の前には変わり果てた姿と数人の兵士の死体があった。 「母上、どうしたの?しっかりしてよ母上。」 どんなに子が呼びかけても全く返事がない。母は死んだのだった。 「母上ぇぇぇぇぇ。」 …………… 「うわぁ」 黄色の髪とエメラルドグリーンの瞳を持った十七歳の少年が悪夢から覚めた 「ちっ、また母上が亡くなったときの夢か。最近、よく見るな。みたくもないのに。」 バリックはさっさと着替えて朝食の準備を始めた。 ちょうど出来上がったころ 「おっはよう、バリック。この匂いは今から、朝食だな?どれ私がご相伴に預かろう。」 バリックは声の主を確認しに玄関に行った。 そこにはオレンジのショートヘアーで瞳は、青色のこちらも十七歳の少女が立っていた。 「アレム、お前、また俺の朝食を食べに来たのか?」 アレムは少しムッとした表情になった。 「またって何?毎日、私があんたの朝食食べに来ているみたいじゃない」 バリックは間髪いれずに反撃に出た 「毎日だから言ってるんだろーが。自分の家では食べないのか」 「だって足りないんだもん。」 「だからって人の朝食を食べてもいいのか?」 アレムはうぅと言ったきり黙ってしまった。 「まぁ、毎日のことだからちゃんとお前の分も作ってあるぞ。」 「さっすが、バリック、分かってるぅ」 バリックはまったくと言って朝食を食べ始めた。 「ふぅ、ご馳走様でした。」 満足といったような顔で言った。 「皿、片付けるからよこせ」 アレムはバリックにお皿を手渡した。 「今日はどうするの?」 バリックは皿を洗いながらそうだなと言ってから答えた 「町外れにある森で魔物相手にちょっくら鍛錬する。いつリフィールのやつらが攻めてきてもいいような。アレムも来るか?」 「もちろん。私もそろそろ弓に触れておかなきゃ。」 そう言って矢を撃つふりをした。 「それじゃあ、お互いに準備ができ次第、村の門に集合ということで」 「分かった、またあとでね。」 アレムは、バリックの家を出ていった 「おまたせ、じゃあ早速行こう。」 「おう。」 バリックの装備は、いつも着ている服の下に鎖かたびらを着て、刃渡り40センチほどの短刀を二本を腰の後ろに付いている鞘にしまってある。 アレムのほうは普段着に胸当てと篭手を装備し背中に矢立がある。 「さて、着いた。油断するなよ。」 アレムは分かったという風に頷いた。 森の奥に進んでいる途中、生物の気配が殺気とともに感じられた。 「アレム、くるぞ。」 「分かってる。」 バリックは短刀を抜き、裏手でそれぞれの手に一本ずつ持ち、アレムは矢を一本だけ取り、いつでも矢を放てるように構えた。 茂みから熊のような魔物が現れたと同時にアレムは矢を魔物の左目を狙って矢を射た。 矢は見事に命中して魔物はあまりの痛さに、喚きながら暴れ始めたがバリックは攻撃をかわしつつ間合いを詰めて左手の短刀から敵の腹部を斬った。 魔物も斬られたときにバリックの位置が分かったのかそのまま反撃した。 しかい、腕はバリックに届く前に矢が突き刺さりそのまま木に刺さりぬけなくなった。 そしてバリックは魔物が痛がっているうちに矢が刺さってないほうの腕を斬り、腕を斬ってないほうの短刀を魔物の心臓に突き刺した。 鮮血を噴出しながら倒れて命が尽きると同時に消滅してしまった。 バリックは血を払ってから短刀を鞘に収めて 「ふぅ、よかった、腕は鈍ってはいないようだ。」 「私も鈍ってなかったよ。」 自分の腕が落ちてないことを確認してから森の奥に足を進めた。 |